
全ての和牛・国産牛にはそれぞれ個体識別番号が振り当てられています。個体識別番号と聞くと難しそうに聞こえますが、実は身近なところで目に触れる機会があるものです。
ここでは、意外と知られていない個体識別番号とその活用法についてご紹介します。
個体識別番号とは

現在日本では、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」に基づいて、牛トレーサビリティ制度を運用しています。牛トレーサビリティ制度では、BSE(狂牛病)の蔓延防止や情報の提供などを目的としており、牛1頭ごとに個体識別番号を設定することによって管理しています。
牧場などへ行った経験のある方は、牛の耳に装着されているタグのようなものを見たことがあるかと思います。このタグのようなものは耳標といい、国内で生まれた牛と生体で輸入された全ての牛に装着されています。
耳標には10桁の数字が割り振られており、この数字が個体識別番号に当たります。個体識別番号によって、個々の牛が特定できるという仕組みです。
牛の出生情報の届出なども個体識別番号を元にして行われます。届けられた情報は、農林水産省で牛個体識別台帳データベースに記入されます。出生届出の場合には牛の生年月日や性別、母牛、牛の種別等の情報が記録され、その後と畜に至るまでの経過がその都度データベースに記録されるのです。
個体識別番号から分かること
個体識別台帳データベースに記録された事柄のうち一部の事項を除いては、「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」第6条の規定に基づいて公表されています。
公表されている事項は以下の通りです。

- 個体識別番号
- 出生又は輸入の年月日
- 雌雄の別
- 母牛の個体識別番号
- 飼養施設の所在地(都道府県名)
- 飼養施設における飼養の開始及び終了の年月日
- とさつ、死亡又は輸出の年月日
- 牛の種別
- 輸入された牛について、輸入先の国名
- と畜場の名称及びその所在地
- 輸出された牛について、輸出先の国名
この他、管理者等の同意が得られた場合のみ公表される事項もあります。
- 管理者の氏名又は名称
- 輸入者の氏名又は名称
- と畜者の氏名又は名称
- 輸出者の氏名又は名称
- 飼養施設所在地(都道府県名を除く)
このように、牛1頭ごとに付けられた個体識別番号を検索することによって、自身が購入した牛肉が「いつ生まれたのか」、「どこで育ったのか」等の履歴を追跡することができます。
牛の生産履歴の検索方法

小売店には牛肉を販売する際に個体識別番号またはロット番号を「容器」や「包装」もしくは「店舗の見やすい場所」のいずれかに表示することが義務づけられています。
そのため、牛がと畜・解体されて牛肉として販売されるようになると、その牛の個体識別番号がラベルに表示されます。スーパーなどでお肉のパックをよく見ると、品名や価格の他に個体識別番号が表記されています。
精肉店など対面販売で牛肉を購入する際には、ショーケースの品名や価格が表示されている箇所に個体識別番号が表記されている場合もあります。分からない場合はお店の方に尋ねると良いでしょう。
個体識別番号が分かれば、インターネットで牛の生産から出荷までの履歴を調べることができます。「牛の個体識別情報検索サービス」を利用して、個体識別番号を入力することで情報を検索できます。携帯電話やスマートフォンからも検索は可能です。
おわりに
個体識別番号は国内で飼育・加工された牛に付けられる番号です。食肉加工された状態で輸入された輸入牛肉には個体識別番号はありません。産地偽装などの事件により、近年では食の安全に対する意識が高まっています。消費者自らが安全な食品を選ぶためにも、和牛や国産牛を選び、このような制度を積極的に活用していきましょう。